海達公子 詩集
なつぎく 小さくさいた かばいろの きくのにほひは にがいなあ |
夕日 もうすこうしで ちっこうの さきにはいるお日さん がたにひかって まばゆい まばゆい (ちっこう…築港 がた…干潟) |
ごんげんさん おほきなまつが うんとある ごんげんさんは すずしいな きらきらお日さん てってても ごんげんさんは すずしいな せみのおうたも すずしいな |
すすき さら さら すすき お山のすすき おててのばして なにさがす あおいお空に なにさがす |
かぜ くもまで とどいた おみやの 松の木 ざあざあ ざあざあ なっている |
お日さん お山の上が 光り出した お日さんの 上る道 あすこ あすこ |
うき草 小さい 小さい うき草 池いっぱいで あゆべさう (あゆべさう…歩いていけそう) |
夕方 なたねが きいない 向ふの方に 人のせた馬が ぼつぼつ通る (きいない…黄色い) |
てふてふ てふてふが ひらひらとんできた もちっと向ふへ とんでいけ あまちゃの花が さいている (てふてふ…蝶々) |
お日さん しほのひきかけた 海で お日さんが およいでいる つかまえやうとしたら つかまえられんじゃった |
大雨 田の上を 雨のけむりが 走る 走る 向ふの山 ひとつも見えん |
ばら まっかい まっかい ばらの花 目にはいって いるうちに 目つぶって 母ちゃんに 見せにいこ |
学校 学校へきたら たった一人であった 机たたいたら 教室一ぱいひびいた |
秋の朝 朝顔が 少ししか 咲かんやうになった こほろぎが どっかでないている 足にさはった夏水仙の花も しぼんでいる |
参考文献:海達公子遺稿詩集