江田船山国宝展編

2001.9.25.作成


  この夏、江田船山古墳の出土品の一部が128年ぶりに故郷熊本へ里帰りしました。
 熊本県立美術館にて9/8から10/8までの1ヶ月間開催されている「江田船山国宝展」の為、東京国立博
 物館からの一時帰郷が実現したのです。
  この機会を逃すと東京まで行かなければ見ることはできなくなると思った私は、9/16の日曜日に子供
 たちも連れて、県立美術館へ出掛けました。
  会場は日曜日ということもあり、それなりの賑わいでしたが、「江田船山国宝展」と謳っている割には国
 宝の出展数が少なく、少々落胆させられました。(金銅製の冠帽や耳飾りなども展示されていると思って
 いたので…)
  それでも目玉の「銀象嵌銘大刀(ぎんぞうがんめいたち)」の凄さには、見学者の誰もが目を奪われて
 いました。
  
  また展示品の中には、江田船山古墳の発掘された経緯が記してある文書もあって、それによると明治
 6年に地元の人が夢のお告げ(それも元日から3日続けて)によって石室を発見したということで、その時
 出て来た90余点の副葬品は80円で一括して明治政府に買い上げられたそうです。(米1俵60kg 1.2円の
 時代)
 
  これらの副葬品は日本の古墳からの出土品としては例を見ないほどの豪華さで、朝鮮半島の出土品と
 似ている点もあり、文化の交流が推測されるという事で、この墓の被葬者の偉大さがひしひしと伝わって
 きます。
  (出土品から見て、5世紀後半から6世紀前半にかけて3人が葬られていると考えられているそうです。)


  
  以下に「江田船山国宝展」の展示物を紹介します
 が、館内では撮影できなかった為、実行委員会発
 行の図録から転載させて頂きました。
  実行委員会の方々、申し訳ありません。
  無断引用ですが、お許しください。
 
  尚この国宝展では、副題に
       「熊本の技と美の1500年」
 とありますように、他に中世の刀剣類や、現代の熊
 本が生んだ人間国宝の方々の作品も合わせて展
 示してありますが、この「古代の浪漫に浸ろう」では
 あえて江田船山の出土品に絞って紹介しています。
 
 
 
 
  
 
      会場で販売している国宝展の図録(1500円)
 
  ※象嵌…絵や文字に沿ってたがねなどで切込みを入れた鉄等の金属の表面に金や銀等他の金属を
 打ち込み、はめ込む技法。肥後象嵌といえば熊本の工芸品として全国的にも有名。
 
       


  

江田船山国宝展が開催されている熊本県立美術館。
熊本城二の丸にあり、すぐそばに二の丸の大駐車場があって便利です。


  

金 銅 製 沓
右足長32.1cm、左足長32.6cm。
実用品ではなく、儀礼用品。
底板と側板の3枚の金銅板から作られていて、かかとと爪先部を鋲で留めてある。
表面には正六角形の文様が施され、底には9個のスパイクがつけられている。


  

直 刀
上…全長91.5cm、柄部14cm、幅3.4cm
下…全長88cm、柄部16.4cm、幅2.2cm


    

画文帯同向式神獣鏡
径21cm


  

  銀装鐔
 全長6.2cm、幅3.8cm、高さ1.15cm。
 大刀の鞘口金具。


  

銀象嵌銘大刀
全長90cm、幅4cm。
これが今回の目玉、銀象嵌銘大刀。
1pにも満たない峰の部分に銀象嵌で75字の漢字が並べられ、
刀身の根元にも躍動する天馬(ペガサス)と12弁の花形、
その反対の面には
魚と鳥の文様が入っていて、1500年もの昔によくもこれだけの技術が…
と見る者を圧倒する。


    

銀象嵌部分の拡大写真。
峰に刻まれた75字は
 
「治天下獲○○○鹵大王世奉事典曹人名无利弖八月中用大鉄釜并四尺廷刀八十練九十振
三寸上好刊刀服此刀者長寿子孫洋々得○恩也不失其所統作刀者名伊太和書者張安也」
 
と読み取られ、
 
「天の下治らしめし獲○○○鹵大王の世、典曹に奉事せし人、名は无利弖、八月中、大鉄釜を用い、
四尺の廷刀をわす。八十たび練り、九十たびつ。三寸上好の刊刀なり。の刀を服する者は、
長寿にして子孫洋々、○恩を得る也。其の統ぶる所を失わず。
刀を作る者、名は伊太和、書するのは張安也。」
 
と解釈されている。この「獲○○○鹵大王」は雄略天皇と推定され、わかりやすく言い直すと、
「雄略天皇の時代に典曹という役所に仕えていた文官の无利弖という人が立派な刀を作らせた。
この刀を身につける者は子孫の代まで恵みを受け、幸せになるだろう。刀を作った者は伊太和で、
この銘を書いた者は張安である。」という事だそうだ。        (参考文献・国宝展図録、小冊子)

  

 これは江田船山の出土品ではない。
右…八代郡竜北町物見櫓古墳出土金製耳飾
   全長6.3p 6世紀中頃
 
左…玉名市大坊古墳出土金製耳飾
   全長6.6p 6世紀初頭
 
2つとも純金製の耳飾りで、今も変わらぬその輝
きには目を奪われるばかりだった。
 それにしてもこんな細かい細工が、1500年も以
前から行われていたとは…
只々感心するのみだった。
  
  
熊本県立美術館のHPへ
 
東京国立博物館のHPへ
 

 
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