風 刺 前 線
Vol.1

2003.2.23.作成


  3月27日
 この日第一回出動部隊が勇躍任についた。
 その昔老将斉藤実盛は出陣にあたり白髪を染めて
 行ったという。我々の相手は源氏でも平氏でもない、
 社会の平和を乱すものその人だ。

  3月28日
 前田鉄工所の工場内では鉄板の上に毛布2枚の隊
 員が寝ていた。
 時価にすれば豪勢なものだろうがとても安眠できる
 代物ではない。外は雨。

  3月29日
 33年の1月三池港に入った外国船はホーベルという
 1分間に23mの炭層を削る近代兵器を輸入した。
 三池の低能率を一挙に上昇させようとするものなの
 だが、サテ、組合員はホーベルで首を締められては
 と自衛サボの戦術をとって来た。

  3月30日
 荒尾署の板張道場に荒ムシロを敷いての仮眠、M巡
 査は夜中出動の夢をみて手探りで鉄帽を探したが、
 ツルツルとしたいかにもそれらしいものが手に触った。
 そのまま引き寄せるとその鉄帽は「アイタ」と言う。驚い
 て見ると何とT警部補の○頭であった。

  3月31日
 会社側から云わせると生産阻害者、労組から云わせ
 ると職場活動家という奇怪な人物、ものは見よう、聞
 きよう、イデオロギーの相違が根本か?

  4月1日
 労組はこの頃警官隊のキンを狙っていると伝えられ
 た。
 一番大事な土産をつぶしちゃ帰れない。

  4月2日
 炭住街の子供たちも争議に無関心ではない。
 ストごっこが始まる、全くお互い泥だらけになるという
 のに。

  4月3日
 三池の闘いは総資本対総労働の闘いだといわれる。
 この中にあって警察も総警察力を発揮しなければな
 らない。

  4月4日
 血圧の高い隊員はここの生活は全く地獄、食事療法
 も出来ず、キンチョウの連続、夜は眠れない。
 

  4月5日
 火野葦平はここの組合本部の上に掲げられた標語を
 見て「黒色の悲劇」と言ったという。
 闘えば本当に極楽に行けるのかな?

  4月6日
 何でもゴネリャアいい立派な時代にヨ、穴の中にばか
 り入っていられるカイ、鉢巻、鉢巻、この鉢巻がオイラ
 の仲間のシルシダゼ !!

  4月9日
 四山鉱正門前で重傷を負った今村、林田両巡査は
 10日を経過したが数日したら退院の予定、あのドサ
 クサ乱闘で殴った奴も判らぬ、辛いカナ民衆の公僕。

  4月10日
 オイドンが部隊は4月2日応援に来ました。
 県外派遣は初めてでゴワス。気はヤサシクて力持の
 部隊でゴワス。

  4月11日
 先生、口惜しくて口惜しくて歯がみしていたら一本折
 れました。本当に口惜しいものね。
 

  4月12日
 「やまの灯」隊内広報誌として誕生する。
 一日も早くやまに明るい灯がともるように…。
 

  4月13日
 警備本部広報車は本部長のアイデアでドテッパラに
 マンガを描いて走っている。乗車中の広報班員最初
 の間はウストローしてボーッ。

  4月14日
 三池の組合と主婦会で開いた学習会は296回、延べ
 28000人が受講している。そのうち192回が向坂教室
 である。この学習活動による理論武装から組合活動
 家という優等生が生まれた。

  4月15日
 この日で鑑識班の撮った写真の焼付実に1万7千枚
 に達した。出動出動でパチリパチリ、採証班の仕事は
 後でものを言う。
 

  4月16日
 三池労組は鉄の団結を誇示している。しかし自由を求
 めるはずの彼らに真の自由があるだろうか? 新聞も
 ある特定のもの以外は読めないなどと聞けば…。

  4月17日
 旅人曰く 日本人の中にも国籍の違った人が混じって
 いるらしい。
 

  4月18日
 男性が無精なのを良く知ってゴザル婦人会の方々、
 良く判りました、有難く頂戴します。
 (陣中見舞にフンドシ100枚四山上区婦人会から)

  4月19日
 炊事班は約1000名の隊員の台所を預かって毎朝早
 くから飯を炊き菜を作った。 ある事務吏員、めし炊き
 ではもう女房にも負けないと自信満々。

  4月20日
 小学校に入学した可愛い一年生が立番中の道を手を
 振って通って行く。 そうだうちの子も今年から一年生
 だった。 警備勤務の忙しさについ忘れてしまってい
 たが、毎日元気で学校に行っているだろうか?

  4月21日
 家に居れば亭主関白もここでは女中以下 一番面倒
 なのは三度の食事 何とか一回で腹の空かないもの
 は出来ないものか。
 

  4月22日
 3月29日四山鉱正門前で第一労組員久保清さんが暴
 力団と乱闘の際刺殺された。
 捜査中の容疑者本村組香月多喜夫(24)がこの日殺
 人の犯行を自供した。

  4月23日
 労組の歌 炭掘る仲間、なかなか良い歌である。
 が、炭は掘らずにデモする仲間にだけなっていない
 か。
 

  4月24日
 荒尾、大牟田は警官の街と化した。 そのおかげか、
 窃盗が一件も発生しない。
 泥公が夜逃げしたのだろう。
 

  4月25日
 森の都熊本市ではいま天守閣が着々とその偉容を
 現しつつある。
 荒尾では毎日毎日雑兵たちのデモ。 こんなところに
 城があったら高見の見物だがなァ…

  4月26日
 この日の出動回数実に16回。 社宅街はけんけんご
 うごう、まるで野外の深夜ジャズ喫茶だ。
 騒音防止法という法律はあったはずだが?

  4月27日
 荒尾市近郊の小岱山の土が陶土に適しているところ
 から小岱焼が作られている。
 小岱焼の特徴は「サビ」にある。

  4月28日
 一寸したケガ人があるとさも大ケガのように見せかけ
 大勢で上にかつぎあげ会社から大金を払わせる、と
 いう話、頭の進んだ人達は違うネ。
 

  4月29日
 隊員たちも仮寝の生活にはなれて来たが、少しも馴
 れてくれないのはイビキ。
 良く眠る奴ほどいびきをかく。 早くいびきをかいたほ
 うが勝ち。

  4月30日
 各県からのオルグは三池にやって来て各社宅に泊
 まっている。
 その費用は700円でそのうち300円は食費として泊め
 ている労組員の収入だそうだ。

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