風 刺 前 線
Vol.3

2003.5.31.作成


  6月1日
 新聞の折込み広告で新旧労組は毎日のようにPR
 合戦を演じている。甲論乙駁。そのなかに我々にす
 ぐ三池を去れと時刻表を送ってきた。
 その頃急行鳩号が廃止された。

  6月2日
 そろそろ雨期に入って来る。
 前線部隊はこの雨期をビニール張りの粗末な小屋で
 どう過ごすか。
 雨よ、心して降ってくれ。

  6月3日
 新労は就労するため人工島を利用して船で労組員を
 輸送していたが、遂に第一労組はこれを阻止しようと
 船舶を雇い海上ピケを決行した。
 
 

  6月4日
 三角署の金田清美技術吏員は警備出動以来激務に
 活躍していたが4月24日過労のため前線を退き遂に
 6月1日永眠された。本日警察葬を盛大に行ってその
 霊を慰めた。 争議以来初めての殉職者である。

  6月5日
 ボーナスの季節が来た。
 しかし労組の攻勢はますます日を追って激しい。
 

 

  6月6日
 荒尾署管内でも各所に散在する住宅街、ここには新
 労と旧労の対立、どうにもならない悪感情が充満して
 いる。新労が疎開先から帰ると直ちに300人位集まっ
 て「説得デモ」と称する精神的暴力を加える。 

  6月7日
 第一組合員の家族ぐるみ闘争の第一線主婦会のオカ
 ミさんよくあんな悪口が言えるものと感心したりあきれ
 たりするが、我々の背後には明るい顔でしっかりと叫
 ぶ妻や子がいる。

  6月8日
 日本婦人の最大長所は優しいことであると思っていた
 が、ここでは男より女のほうが強いらしい。
 
 

  6月9日
 米国映画で見るアパッチ族。
 場所もまたアメリカの大平原に似ているようだ。爆竹
 が上がると一斉に日本アパッチ族は現場に急行する。

  6月10日
 総評は大牟田市で臨時大会を開いた。
 その頃東京ではアイクの日本訪問を巡って全学連を
 主体とした大変な大衆デモとなり世情騒然としていた。

  6月11日
 総評オルグが三池にも大変な数に増えた。その負担
 はみんな労組員に掛かってくる。三池争議の本質は
 総評の方針である安保反対にすりかえられ雑兵の
 背に掛かっていた。

  6月12日
 ホッパー死守に労組員、オルグなど2万を集めた。
 毎日ホッパー日参、閑々に作ったらしいホッパーパイ
 プ。大牟田で総評の臨時大会が開かれ、大田議長は
 ホッパーパイプをもらってゴマンエツ。

  6月13日
 「秘境ヒマラヤ」という映画が上映されているがこれに
 劣らず三池の秘境ぶり、篭城中の第二組合員に郷愁
 を誘う戦術か? はだかデモ、私は見たことは無い。

  6月14日
 岸政権を倒せの声はいよいよ東京の国会議事堂周
 辺を中心に混乱に明け暮れた。
 

  6月15日
 新労の婦人が風呂に行くとものすごく湯が熱くなる。
 たまらず上がろうとすると4、5人の第一組合員の婦
 人がこれを取り巻きののしりながらあっちを触りこっ
 ちを触る。裸のまま立ち往生。

  6月16日
 熊本県警始まって以来の難関にぶち当たった。
 荒尾で右足を取られ左足は下筌問題がそろそろ我々
 の出動を必要とする情勢になった。
 

  6月17日
 久しぶりに帰った我が家ももう交代の時間だ。

 
 
 

  6月18日
 東京国会議事堂は遂に流血の惨を現出した。全学連
 の主流、反主流を基礎に労働団体、その他数万の群
 集は議事堂に乱入、アイクは遂に訪日を取り止めて
 フィリピンから朝鮮へ来てアメリカへ帰ってしまった。 

  6月19日
 国会内での全学連と警官隊の衝突で遂に樺美智子さ
 んが死亡した。死因は圧死であると発表されたが、何
 か警官隊によって殺されたかのように逆宣伝するもの
 も多い。冷静な頭に早く立ち戻ることが必要だ。

  6月20日
 社会党は衆議院における安保改正の強行採決を不満
 と全員辞表を取りまとめたが、結構な議員商売に未練
 が多かったのかとうとううやむやのうちに辞表を撤回し
 てしまった。

  6月21日
 勤務の都合もあるのだろうが、たった一日の生理休
 暇?では駐在所のダンナの名誉も地に落ちると、ぼ
 つぼつ長期勤務隊員の声も囁かれるようになった。

  6月22日
 下筌では御大将室原知幸氏が相変わらず建設省の
 強制測量に反対。原始時代的な撃退作戦を行ってい
 た。県警ではこの事態に1ヶ中隊を警備に向けた。

  6月23日
 いよいよ岸首相は相次ぐデモの波状攻撃に政権の座
 を降りると声明。声なき声があると確信を持って述べ
 たが、遂に声なき声は岸政権を安定してくれなかった
 ようだ。

  6月24日
 警備勤務のひととき、ふっと考えることがある。
 何故人間同士こんなに憎しみ合わなければならない
 のだろうか。
 

  6月25日
 県警出動後の治安は一応留守勤務員の非常な努力
 によって保たれてはいるが、検挙率の低下はおおう
 事の出来ない事実となってきた。
 

  6月26日
 全学連は今日、共産党本部にデモをかけて党員との
 間に格闘が演ぜられた。現代日本の奇形児全学連、
 世論もやっとそのハネッ返りぶりに困惑し、その行動
 を非難するようになった。

  6月27日
 自民党は次期首班を巡って政権のタライ廻しを
 狙った。
 

  6月28日
 次期総裁の候補者として大野、池田、石井の三者が
 出馬した。国民の眼は次期首班が誰かに最大の関
 心を示した。

  6月29日
 どこに行って来たかって…。
 聞くだけ野暮さ、
 ちょっと洗濯物を届けにネ〜。
 

  6月30日
 片や下筌の蜂の巣砦では室原氏が相変わらず頑張っ
 ている。しかし同じ闘うにしてもユーモアもあり、人間的
 でもありこの城の主人。赤旗はあまりこの人には似合
 わない。

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