風 刺 前 線
Vol.4

2003.8.12.作成


  7月1日
 争議はどこまでもぬかるみの道をあてもなく続いてい
 く。石が粉砕されるか、車が壊れるか。泥をひっかけ
 られるのは警官隊だ。

  7月2日
 ついに室原天皇に逮捕状が出されたが、県警は令状
 の執行を慎重にし、再三再四室原氏の任意出頭を求
 めて政治色のある逮捕を避けようと努力した。

  7月3日
 この頃まだ総裁指名がゴタついていた。
 
 
 
 

  7月4日
 韓国政府は李ライン附近でさかんに日本漁船を捕獲
 した。三池争議では人工島からの入坑を阻止する第
 一労組の船と第二労組、会社側の争いが海上ピケと
 いう名のもとに行われている。

  7月5日
 日本三景も昔のような美しい景色では通用しない。
 この力動感にあふれる日本の三大名所。

 

  7月6日
 釘付けされた警官隊。警官もまた人の子、可愛い妻
 子もいる。早く勤務地に戻りたいと願うのは人情だ。

  7月7日
 ローマ派遣のオリンピック選手団が決定された。
 争議競走の長距離選手として三池労組は最適任者
 だろう。
 

  7月8日
 三池はオルグの街、全国から来ているオルグは常時
 2000人といわれている。警察官も九州はもちろん山
 口、広島などからも応援に駆けつけているが、まだま
 だ数だけなら労組に及ばない。 

  7月9日
 恒例の富岡のフカ狩りが今年も催される。今度は特
 に米国からロケ班もくるという。しかし今、人工島上陸
 をめぐって第一労組と第二労組は花火の水平射撃、
 投石、など海戦さながらの攻防戦を催している。

  7月10日
 今の日本を眺めると問題が多すぎる、あまりにも騒然
 とした日本。こんな時、立派な政治家、救世主が現れ
 ないものか?

  7月11日
 荒尾から帰って交番に立つと、いままで民警一致をス
 ローガンとして進めてきた我々の考え方も怒声と罵声
 に洗脳された為か全部が鉢巻姿の労組員に見えて
 困る。

  7月12日
 仮処分の決定が福岡地裁から出されても強気の労組
 はこれを蹴っ飛ばした。現代の英雄労働者。
 
 

  7月13日
 岸首相は相次ぐ暴動事案に手を焼き、治安対策の強
 化を表明した。お巡りさんを国民の憎悪の的にするよ
 うな対策はゴメンだ。

  7月14日
 大野、石井、池田の三氏は次期総裁を狙って家の子
 郎党とともに大活躍。
 

  7月15日
 早くも初盆が廻って来た。
 久保さんの殉難碑は四山鉱正門前に立っている。

  7月16日
 西瓜が今年はめっぽう安い。今が一番うまいとき、神
 様にあげてある仮処分に反対、反対。

  7月17日
 総裁公選で池田新総裁が誕生したが、会場を出よう
 とする岸首相を暴漢が襲って重傷を負わせた。
 

  7月18日
 三池は今次闘争の最大のヤマといわれる事態に突入
 した。ホッパーの仮処分執行に対して労組員は各オル
 グの応援と共に約2万人を集めて死守しようとした。

  7月19日
 蝉は今日もやかましくなきたてている。夏はいよいよ
 本格的だ。
 

  7月20日
 「麦飯を食え」の放言で有名な池田勇人が遂に政権の
 座に座ることとなった。世人は池田新首相の今後の政
 局の収集について期待と不安とを持って眺めた。

  7月21日
 ホッパーを死守しようとする労組員約2万。これに対す
 る警官隊1万500名、あわや流血の大惨事が起ころう
 としたが、石田労相の仲介で一触即発の事態は免れ
 た。

  7月22日
 全学連30数名が三池争議応援のため大牟田市にやっ
 て来た。この恐るべき学生群は果たして三池で何を企
 図しているのか?遂に今日は大牟田署前で警備の福
 岡県警機動隊と衝突、多数の検挙者を出した。

  7月23日
 石田労相は会社、労組の中に入り流血の惨を引き起
 こさぬよう一時休戦に成功したが、現地の意見は労相
 の説得にも応じられないとする勢いを見せた。

  7月24日
 現代社会の奇形児、世界に名を売った全学連。
 平和を愛する者の脅威者となった。
 

  7月25日
 いよいよ中労委が第三回目斡旋案を出すようになっ
 た。しかし、勝利者として第一労組が職場に帰るとな
 るとまだまだ事は簡単にはすまない。 

  7月26日
 初めての婦人大臣中山マサ女史、男まさりの中山厚
 相。男まさりなら三池主婦会にはゴマンとおりますゾ。
 

  7月27日
 比叡山に参詣した主に老人44名を乗せたドライブウェ
 イのバスが崖下に転落、死亡者28名を出した。三池
 の争議車は山を降りてくる。「あっせん案」はよほど立
 派なものでないと万一の時これを乗り越えて流血の
 惨事を引き起こすことになる。

  7月28日
 「あっせん案」の提示まで会社と労組の陳情合戦は熾
 烈だ。
 
 
 

  7月29日
 今年の夏は全然夕立のないものすごい暑さが続く。
 
 

  7月30日
 振り上げた「鉄槌」と「はさみ」、あっせん案が出るまで
 あと一週間、氷が解けたときは槌もはさみも要らない
 ように。

  7月31日
 総評の大田議長は辞意を表明した。部外の我々にそ
 の真意は判る事ではないが、出身労組宇部窒素の組
 合組織が動揺して来たことが原因であろうか。

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