“人 災” そ の 後
有明鉱火災から1ヶ月
その4










 
  新労  保安の不備、見抜けず 労使協調裏切られた!? 最大のピンチに
 
  事故の夜、 安永嗣・三池新労組合長は知人と東京・銀座にいた。 火災の一報は入ったが、
 「たいしたことはない」という内容。大惨事の知らせに変わったのは19時を過ぎていた。 会社と
 協調路線を取る組合の最高幹部にまで“事故隠し”をするとは。 安永組合長は怒りと犠牲者へ
 の心配で眠れぬ一夜を東京で明かしたはずだ。
  ストをしない新労組合員に、会社は月額四千円を「生産協力金」として払っている。 三池争議
 中の分裂以来、会社は待遇や人事などでことごとく新労を優遇してきた。 「四千円」はその象徴
 だ。 三池労組が提訴したCOマンモス裁判で会社が敗れた場合、新労系の遺家族は自動的に
 三池労組と同額の補償金を会社から受け取る予定。これも優遇の一例。
  しかし、いくら労使協調でも保安問題は別というのがヤマの建前だ。 命は金に換えられないか
 らだ。 ところが、歴史的な事情から三池労組員が一人もいない有明鉱で数々の基本的な保安
 の手抜きが指摘されている。 34人の犠牲者を出し、会社との交渉でも主導権を握る新労として
 は、結成以来最大の危機を迎えたといえる。 「会社の保安の不徹底を見抜けなかった責任は
 率直に認めます」と安永組合長は再三述べて、組織下部からの組合不信を最小限にとどめよう
 としている。
  現在、新労と職組は、ある新聞の事故関連報道に「誤報、中傷が多い」として大がかりな不買
 運動を行っている。全組合員の購読紙をチェックして100%解約をめざすほか、上部団体である
 有明地労、九州同盟の協力も取り付けている。 いま町の話題は事故よりこの不買運動に集中
 している。
  「不買運動の是非はともかくとしても組合員に執行部のカを見せつけ、組織の揺れを引き締め
 る効果はあったでしょうね。 そこまで読んで始めたのかどうかは知りませんがね」と、三池労組
 の関係者は言う。
  三池労組は「犠牲者の立場にある新労をとやかく言うのは礼に失する」 と表立っての発言は
 控えている。 しかし、CO中毒の後遺症に苦しむ三池労組員などからは「遺族会を組織して完全
 な補償を要求し、『四千円』も返上して抗議ストぐらいするのが労働組合だ。 保安面での改善策
 を闘い取ってほしい」という声が出ているのも事実。
   安永組合長は「遺族会を作るには目的も検討すぺきだし、今は遺族の間をこまめに回ってお
 世話をするほうが遺族のためにもなるのではないでしょうか」 と、今のところ遺族会作りには積
 極的ではない。
  正念場が続く新労、じっと見守る三池労組。その間に因縁の深いミゾが冷え冷えと、 ある。
 
三池新労有明支部の事務所
                                                   2002.5.25.作成




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