“人 災” そ の 後
有明鉱火災から1ヶ月
その5
保安監督 “なれ合い”行政に批判 抜き打ち検査望む声も 有明鉱をはじめ鉱山の監督官庁である福岡鉱山保安監督局は福岡県警などと合同で事故究明 を急いでいるが、監督行政そのものへの不信の声も次第に大きくなってきている。 日本の石炭産業は、エネルギー防衛という国策の一環を担っているが、採炭現場の深部化など で掘り進めば進むほど生産性が落ちる現実に直面し、機器による合理化と人減らしを余儀なくされ ている。安定供給と経済性の追求という相克の中で監督局の保安監視体制は十分だったのか。 「保安なくして、生産なしですよ」と同局の野口武管理課長は“保安優先主義”を唱えるものの、 「あくまで保安体制は会社の自主保安であり、監督局はサイドチェッカーにすぎない」と続ける。一 方、三井石炭鉱業の久保実三池鉱業所次長は「監督局の行政指導は絶対の強制力がある」と監 督行政を強調する。そこには責任の譲り合いとも映る両者の見解の違いがある。 監督局は毎月1回以上、坑内の立ち入り検査を行なっているが、鉱員の中には 「調査日程が事 前に漏れているため、調査個所だけを掃除して済ますことがある」と“なれ合い”を批判する声も出 ている。 事実、新しく導入した設備の性能検査、一定の目的を持った特定検査、それに坑外施設 や帳簿までを対象にする総合検査などはすぺて数日前に予告している。「会社側の準備の都合も あるからだが、巡回パトロール検査は抜き打ちにしている。なれ合いはないと確信している」と同局 幹部は言う。 しかし、「監督局が来ると三井石炭の接待用の港クラブや山の上クラブが繁盛するの はいつものこと」という鉱員もいる。 参院の事故視察調査団は「通産省などの日ごろの指導が徹底していないからだ」と鉱山保安監 督局の指導行政の強化と2000万トン体制の見直しを示唆。三池労組の中原一書記長は「監督局 が通産省の機構の一部ということに限界がある」と指摘しながらも、抜き打ち検査の徹底を要求し ている。
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