“人 災” そ の 後
有明鉱火災から1ヶ月
その6










 
  三井   年産500万トン達成へ焦り   操業再開、早くても4月
 
  “三井城下町”と言われる大牟田市。 政府の石炭対策特別委の事情聴取に対して黒田市長は
 「大牟田市経済を悪化させないためにも三池鉱業所の早期操業再開を望む」と要望した。工業出
 荷額の九割以上が三井系企業で占められ、従業員数は市内の全従業員数の三分の一。石炭見
 直しが叫ばれ、わが国最大のビルド鉱、三池鉱業所とともに浮揚策を模索しようとしていた大牟田
 市をも襲ったのが優良鉱・有明の事故だった。
  三井石炭鉱業は三池の三山(四山、三川、有明)と北海道・石狩北部に砂川、芦別の二鉱を抱え
 ているが、出炭効率の悪い砂川、芦別を三池がカバーしてなんとか維持しているのが実情。三池、
 砂川、芦別三鉱業所の総出炭量約700万トンのうち三池鉱業所は約500万トンを占める。
  大牟田市、三井が頼みとする三池鉱業所。しかし三川鉱が断層にぶつかり、四山鉱は坑道の深
 部化が進んで坑内条件が悪化、両鉱とも出炭コストの上昇をきたしている。 それだけに坑道が地
 表下220〜320mと浅く、炭質の良い有明鉱に期待が大きかったわけだ。
  三井三池の年産500万トンは、政府が48年のオイルショック後打ち出した「国内生産年間2000万
 トン維侍」の政策(現在の実質は1700万トン)に組み込まれている。国内エネルギーの安定供給を
 目的に、それ以後融資、補助金による手厚い保護政策がなされているわけだが、 三井石炭にとっ
 て500万トンの未消化は政府の2000万トン体制への“自己否定”につながり、保護政策にも影響を
 及ぼしかねない。
  「国の安全確保のためにも現在の2000万トン体制は維持すベきだ」 という会社幹部の言葉の裏
 には会社経営への危機感がある。 同社の累積赤字は95億円に上り、加えて有明鉱の出炭ストッ
 プは一日1億円の損失を生んでいるからだ。
  三井としては有明鉱の操業再開を急ぎたいところ。 しかし有吉三井石炭会長が「当局の事故原
 因調査と並行して暫定生産を始めたい」と言明、通産省から厳重注意を受けて久保三池鉱業所次
 長があわてて発言を打ち消す一幕もあった。
  火災発生現場の密閉部分を取り除く作業は16日から始まったが 、有明鉱の操業再開は早くとも
 4月という見方が強い。久保次長は「操業再開のめどがつかないため、来年度はなりゆき生産でい
 くしかない」としている。しかし6日から操業を再開した四山、三川両鉱は既に一日約1万トンの平常
 出炭体制に入っている。赤字増と年間500万トン達成へのあせりが見え隠れしている。
                                                        (おわり)
 
有明鉱の出炭ストップを取り返そうと
既に平常出炭に入った三川鉱
                                                   2002. 6. 16.作成




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